日経 五つ星の美術館』日本経済新聞出版社,2007年.
格付けされた美術館。
ミシュランガイドにも東京版が登場し、世間的にも何かと「格」という言葉が流行している昨今。だが本書において「美術館を格付ける」という行為は、そうした流行に安易に乗ったものではない。美術館が置かれている現実に鋭く反応した結果出てきた価値ある調査成果なのだ。
独立行政法人化された国立の博物館・美術館は、企画と採算の間の葛藤が高まり、地方の公立館は予算削減と指定管理者制度に揺れている。そうした現状をふまえ「費用対効果、入場者数に依存するだけが美術館の評価ではない、新たな評価基準が必要」と関係者の誰もが思っている中、一つの指標を提示したのが日本経済新聞社だった。さすがは文化欄にも定評がある同社である。ここ10年の間にミュージアムをどう評価していくかはマネジメント意識の伸長とともに盛り上がりつつあったが、ここまで大々的に評価を下し、書籍という一般の目に届く形で提示した先例はない。
では実際には、どんな評価方法を採ったのか。どうやら美術館の仕事を3つにわけて考えたようだ。展覧会の企画力や研究能力を計る1)学芸力、入場者数や助成金獲得具合などを計る2)運営力、学校等と連携したプログラムなどを計る3)地域貢献力、を評価軸として策定。これに専門家の意見を加味し、それぞれの館の偏差値として算出し、星5つから星1つまで5段階の総合評価を与えている。
調査主体も認めているように、評価の時期と基準により、星の数は容易に変化してしまう。そのため本調査の結果与えられた星の多さで館の能力を即断するわけにはいかない。ただし、重要な点は、調査主体の努力によって全ての国公立美術館を対象に評価が「初めて」行われたということである。今後もミュージアム評価の問題は議論の尽きない領域だが、本書は「変化のための着実なる一歩目」と評価できよう。
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