—生活の器でありながら、オブジェであり、絵画である——「ただひたすらひとつの塊に絵を描きたい」、その思いの結晶となったのが前田正博(まえだまさひろ)の器です。真っ白な磁器をキャンバスに見立てて色を重ねて置いてゆく作業、それは絵付を中心とした前田の表現スタイルとなっています。陶芸家・前田正博(1948-)は京都府久美浜に生まれ、東京芸術大学で陶芸を学びました。現在は東京六本木に工房を構えています。
前田の作品は色絵金銀彩(いろえきんぎんさい)の磁器です。絶妙な色彩は真っ白な土に始まり、マスキング※をしては色を乗せ焼成するという工程を5回以上も繰り返すことによってもたらされています。出来上がりの効果を緻密に計算した色絵であり、長い実践で取得した技術が活かされています。そして絵付には椰子の木や花、月、フクロウなど、自然の生物がモチーフとしてのびやかに描かれます。その自在な組み合わせによって作られる鉢や皿などの器は、青や赤などの鮮やかな色で軽快に配色されながらも、同時に不思議な清澄さを湛えています。色絵磁器に新たな世界を切り拓く前田正博の器約100点をお楽しみください。
※ 釉薬の塗り分けをするために、テープなどを貼って釉薬を掛ける箇所以外を覆い隠すこと。