
TOTO出版20周年のイベント。脂が乗り切ったというにはフレッシュすぎる30代建築家5人がそれぞれ20冊の書物を推薦、その理由と読み方を指南する。初回(1/26)平田晃久さんに続いて、昨晩(2/4)中山英之さんの回に行ってきた。会場をびっしりと埋め尽くしたのは若者。筆者と同世代の中年は少ない。そんなわけで、建築家は、本の紹介、自らの関心事にとどまらず、本と巡り会った時代と建築状況など、噛んで含めるような語り部となった。『animated』を書いた平田さんはまさにそうだった。認知科学や生命科学や哲学、空間やコミュニティなどなど、建築を考えるためには広い教養が必要である、そんな建築家になるための必読書を紹介した(家に戻り、即『ゴシック建築とスコラ哲学』をアマゾンで発注!)。
中山さんの回、『大きな森の小さな家』からはじまる読書履歴紹介は、タイトル「本のなかとそと」に暗示されていたのか、まったくもって絞り込まれたひとつの関心事、つまり、じぶんとそれをとりまく環境についてだった。それは主体と客体というより、具体的な部屋について感じとることでもあった。
生きるためのシェルター「小さな家」に育ったローラは、はじめて行った街の雑貨店で溢れるばかりの商品に自からを失うが、帰り道の河岸で拾った丸石をポケットに詰め込むことで安寧を得たという。バックミンスターフラー(『テトラスクロール』)は、小熊座のWに見える4つの星、実は4面体だったと子どもに語りかけた逸話を引くが、その立体視(外からの視点)が絶対なのではなく、むしろ二次元化して見ることが大事ではないか、中山さんはそう聴衆になぞかけする。最小限のビークル筏に、生存維持のため最大限荷物を積み込んだ「コンチキ号」の実験と、建築家の実践は同じことだといい、死体発見にいたる凝ったシナリオを、全体のストーリーとは関係なく撮ってしまったヒッチコックに、建築家として共感を憶えるともいう。
選書のほとんどが一般向けの書で、語り部が(対話的に)論を進めていくものである。これは中山さんが建築について語るとき、建築について思考を進めるとき(多くはスケッチを用いる)と同じということに、気がついた。超越的だったり抽象的な視点をとる(宇宙を眺める視点は神のみがとりうる視点である)ことを避け、ひたすら具体的な出来事(少女が登場する)を例に出し、じぶんを取り巻く部屋の広がりや上下の関係、つまり環境について対話的に思考すること。それは抽象的な空間の存在を認めず、アフォーダンスの概念を提唱したジェームズ・ギブソンだったら生態学的といったことだろう。そんな読書経験と履歴だった。
蛇足だが、中山さんが見せてくれたヴィジュアル、それは本の表紙だったり、組版のアップだったり、偶然発見した姉による押し花や往年のアイドルの栞だったり…。あらためて実体でしか味わえない本の魅力を再発見した晩でもあった。
http://event.telescoweb.com/item/recent_post
なお、5人が勢揃いする最終回(2/6/2010)だが、ギャラリースペースで聴講可とのこと(申込不要)。
参照ページ
30代建築家による連続レクチャー+展覧会 「建築家の読書術」
01/05/2010 - 11:09
注目を集める30代の建築家、中村拓志、中山英之、平田晃久、藤本壮介、吉村靖孝の「読書術」を披露。
スケジュール:
第1回…1/26(火)…平田晃久「からみあう本と建築」
第2回…1/28(木)…藤本壮介「建築へとつながる20冊の本」
第3回…1/30(土)…中村拓志「自作と読書の関係」
第4回…2/2(火)…吉村靖孝「トレーニング、ミチクサ、ケンチク」
第5回…2/4(木)…中山英之「本のなかとそと」





